医療法人の出資金対策

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後継者への円滑な事業承継を支援

医療機関の事業承継については、その組織形態により異なる。医療機関の組織形態も一般の事業体と同じく大きくは個人と法人に分かれる。個人の医療機関の承継については関係各庁に個人の開廃院の届出と使用する什器備品等の移動(売買、贈与等)などで済む。しかし、法人組織である医療法人の承継の場合は注意を要する。医療法人の承継も一般の法人と同じく基本的には、代表者である理事長の交代と出資金の移動ということになるが、この出資金がいささかやっかいである。

出資金も一般法人の株式と同じく、税務上は「取引相場のない株式」に該当し相続税の課税対象となる。つまり相続の時には、相続税評価額で算定しその時点での時価を算出する。相続税評価については、非常に複雑なのでここでは割愛する。

しかし基本は税金を払った後の利益を蓄積し内部留保が厚くなるほど評価額は増えていく。下の図1を見て頂きたい。

この出資金1,000万で事業を開始し税金を払った後の利益800万を2年蓄積すると、相続税評価のもととなる純資産価額(法人の正味財産、相続税評価はこれだけではないが)は1,000万から2,600万になる。これを10年続けると純資産価額は1,000万が9,000万になる。つまり利益を出し蓄積していくほど相続財産が増えるのである。しかもこの出資金は前述したように「取引相場のない株式」であり簡単に換金できない。内部留保を減らす方策として配当があるが、医療法人については現状、医療法54条により配当は禁止されている。一般に法人であれば配当である程度社外流出させることができるのであるが、医療法人では不可能で、毎年の利益そのものを調整していくしかないのが現状である。

出資金の評価が2億にも3億にもなっている医療法人を見かけるが、この出資金の持分が代表者である理事長個人に集中している場合は危険である。相続時には医療法人の存続自体が危ないといことになる。

下の図2を見て頂きたい。先程の図1の事例の続きであるが、税引き後利益800万が20年続くと図のように純資産価額は17,000万になる。

上図のように9割を持つ理事長の評価額は15,300万である。この評価に相続税がかかった場合は、この出資金以外の財産で相続がかかる場合は出資金部分の相続税だけで評価額の3割から4割(この事例では4,590万から6,120万)の相続税が余分にかかることになる。もちろん設備投資や退職金(慰労退職金を含む)等で調整していく(下の図3参照)のでまったく事例通りにはならないが基本的な考え方は上記の通りである。

従って、上記のこと踏まえて利益計画と連動させて早期に出資金の対策を立て、常日頃から管理していく必要がある。

もう一つ事業承継で重要な課題に「誰に理事長を交代させるか」ということがある。理事長の交代については、後継ぎがいる場合(息子さん等)と後継ぎがいない場合に分かれる。後継ぎがある場合はその対象者である息子さんに交代すればよく、後は出資金の異動の対策を練ればよい。しかし問題は後継ぎがいない場合である。

後継ぎがいない場合の選択肢は2つしかない。1つ目は医療法人を第3者へ譲渡する(M&A)、もう1つは解散して清算する、である。上記の2つの方策のうち、どちらが良いかというと第3者への譲渡(M&A)をお勧めする。理由は税制的に非常に優遇されているからである。第3者を見つけるのがやっかいであるが、最近では、その第3者を見つけてくれる業者やコンサルタント会社も数多くなっているし、今後30代、40代の開業予備軍の医師も数多くいる。

それでは、第3者への譲渡(M&A)が税制的にどう優遇されているかであるが、下の図4を見て頂きたい。

譲渡金額は上図のように算定するが、仮に上図の事例で営業権に1,000万算定できたとすると、譲渡金額は7,000万になる。1,000万出資して事業を始めたとすると儲け(所得)は7,000万から1,000万引いて6,000万になる。これに税金がかかるが、株式を譲渡した場合の儲けに対しては金額いかんに関わらず、一律に20%(所得税15%、住民税5%)しかかからない。つまり儲けの8割が手取り(この場合では4,800万が手取り)である。一方同じケースで解散して清算する場合を考えてみる。下の図5を見て頂きたい。

上図のように、解散して清算した場合には、清算所得といって解散事業年度の所得に含み益(純資産価額から出資金を引いたもの)に法人税等(他に法人市民税や府民税、事業税)が課税され、その税金を払った後の残余財産が個人の持分によって配分されることになる。

この場合の清算所得に対する税率であるが、法人税等合計で実に40%近い税率が適用される。第3者への譲渡(M&A)の場合と倍近い税率である。しかも、個人に分配された残余財産に対してもそれぞれの出資金額を上回る部分の金額に対しては配当所得として他の所得とともに所得税、住民税が課税される。

上記のような比較により、我々は、後継ぎがいない場合は第3者への譲渡(M&A)をお勧めし、お手伝いもしている次第である。

いずれにせよ、事業承継は事業を継続してきた最後の総決算であり、長年に蓄積等により金額も大きな事例が多い。従って、早い段階から計画を立て、管理していくと同時にその分野の専門家を上手に利用することお勧めしたい。

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